Q:LSTR療法って何ですか?
A:細菌が原因で起こっている病気では、病巣の細菌を殺菌し無菌化することによって、生体が本来持っている組織修復機能により病気を治す、という考え方で、特に新しいものではありません。
例えば、軽いすり傷を負った時に、傷を洗って消毒します。これもLSTR療法です。つまり医療では普通に行われていることです。
しかし歯科領域、特に歯の治療に際しては、細菌が侵入して生じた病巣(例えば虫歯)は削り取ってしまう療法を採り、細菌だけを殺して病巣組織の回復を図る療法(=LSTR療法)は行われていません。
Q:病巣の無菌化は必要なのですか?
A:「細菌性の疾患が治る」ということは、「細菌が除去される」ことが前提です。つまり無菌化される、ということです。生体には感染防御機構(免疫作用)があって、細菌と常に戦っています。激しい戦いの場合に「腫れ、痛み、発熱」という「症状」として出現しますが、戦いに勝つと症状はなくなり、その時には無菌化が達成されています。
歯の場合、エナメル質が破壊されている状態(=虫歯)は、皮膚や粘膜における潰瘍と同じで、細菌が自由に体内に出入りできることを意味しています。歯の感染防御機構(免疫作用)は非常に弱い、一方、侵入してくる細菌(口の中の細菌)は非常に多いので、通常、戦いに負けて病巣組織(=虫歯)は拡大します。この様に免疫機構によって細菌が除去されにくい場合、3Mixのような人工的な殺菌剤を援軍として送ることにより、病巣の無菌化を図ります。
Q:なぜ3種類もの抗生物質・抗菌剤の混合が必要なのでしょうか?
A:象牙質病巣(ウ蝕部)や、歯髄炎、感染根管の病巣部には、口腔の細菌が入り込んでいます。その種類は雑多で、きわめて多種類の細菌の殺菌が必要です。新潟大学口腔細菌学教室で口腔のいろいろな場に生息・感染している細菌の種類を調べ、これに対する抗菌薬剤の殺菌効果を調べたところ、1種類の抗菌薬剤では全滅させることができず、2種類でもできない場合があり、3種類の混合薬剤の組み合わせ(=3Mix)を用いると、調べた限り完全に殺菌できました。
Q:治療ではどのくらいの量が使われるのですか?
A:極めてわずかの量で有効です。単位としてはμg/mlです。
具体的には、混合薬剤の量として、直径1oの塊が1回分で、ほとんどの症例では1回の使用で済みます。
全身投与で用いる量に比べると、数十分の一から数百分の一の量です。
Q:抗生物質・抗菌剤は、アレルギーが怖いのですが大丈夫ですか?
A:治療は、歯の中に薬剤を充填し、シッカリ蓋をする型になります。
歯から薬剤が漏れ出て血管の中に入ることは考えられません。万が一、薬剤が漏れたとしても、3Mixは、水に接すると薬の効果を失ってしまうので、アレルギーは起こり難いと考えられます。これまで、15年間に何万人かに使用してきて、アレルギーの報告はありません。
しかし、薬物アレルギーのある方は、治療を受ける時に申し出てください。
Q:抗生物質・抗菌剤に耐性菌はつきものですが、大丈夫ですか?
A:第1に、それぞれ作用機序の違う薬剤3種類に同時に耐性を持つように遺伝子を変えるのは難しい。第2に、正しく使用すると病巣の細菌は100%殺菌されるので、生き残る細菌はいない。という理由から耐性菌は生まれにくいと言えます。
Q.3Mixを使用できない症例(=禁忌症)にはどんなものがありますか?
A.禁忌症例とは多少異なりますが、次にあげた患者さんには使用しません。
・ 3Mix-MPの使用に同意を得られなかった患者
・ 多種多様の薬剤にアレルギーのある患者
・ 3Mixを使うまでもなく治ると思われる症例
Q:乳歯の治療に使った場合、その下にある永久歯に悪い影響はありませんか?
3Mixの中にテトラサイクリンという、歯に着色する薬剤が入っているので気になるでしょうが、その心配は全くありません。
Q:妊婦・授乳中のお母さんに使用しても大丈夫ですか?
A:前にも書きましたが、「薬剤が血液中に入ることは無い」と言って良いほど可能性は非常に少ない点、使用量が微量な点、薬が薬効を失いやすい点等を考えると、安全と考えられます。
しかし危険はゼロではありませんので、3Mix以外の治療法があれば、そちらを選択するべきです。
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