1.LSTR 3Mix-MP法 の位置づけ

<内科の治療概念>
 学生時代の内科学講義ノオトを見ると、「内科治療は、可逆的なものの枠内で、本来人体のもっている利点を利用し、害なる点を抑えて疾病を癒し、健康を保つ。」とある。種々の疾患で組織の破壊が起こると、起因要素を除き、生体の防御機能や修復機能を賦活して生体組織レベルの修復を実現するわけである。起因要素が排除されると治癒機転が起こり、破壊された組織は、結合組織の再生により修復される。組織の修復には十分な栄養と細胞活性化刺激が必要とされ、食事療法、運動療法などのリハビリテーションが行われる。
これが内科の治療概念と云われるものであろう。

<内科的歯科治療>
 歯科領域には、う蝕、歯の喪失、顎機能障害、口腔癌など多種多様な疾患がある。これらの疾患の中で歯科独特のものは「歯の喪失」である。すなわち、義歯治療は歯科医しか出来ないが、他の疾患は医師も治療することができる。そういう意味で、歯科が医科との比較の中で、特殊と言える部分は欠損補綴に限られるはずである。
 であるなら、う蝕などの歯科疾患の治療は、医科を代表する内科の治療概念に立脚して然るべきである。「本来人体がもっている利点(=免疫と組織再生)を利用し、害なる点(=起因要素=病原菌、異物)を除いて疾病を癒す」という治療概念は、歯科疾患に置き換えると、「生体組織レベルの修復を得るために、口腔内を清潔にし、バランスのとれた咬合状態を構築し、生理的咬合圧を付与し、咀嚼機能の回復を図る」となる。この概念に立脚した治療を、従来の歯科治療あるいは「口腔内科」と区別し、内科的歯科治療と云う。

<LSTR Therapyの位置づけ>
 例えば、細菌感染症における主たる起因要素は病原菌であることから、治療は体内に侵入した病原菌の排除を主としている。病原菌は生体免疫系の働きにより殺菌・除去されることから、患者の安静と体力の回復を図ることが重要とされている。生体免疫系の働きが病原菌の排除に不十分な場合には、援軍として抗菌剤・抗生物質が投与されることになり、病原菌が駆逐されると、臨床症状は消失し、障害された組織は再生する。こういう治療を一言で示すと「病巣無菌化、組織再生」療法(LSTR Therapy)であり、一般医科での内科治療では当然の概念である。
 う蝕、歯周組織炎が細菌感染症であることは広く認められている。従ってこれらの歯科疾患も全身の感染症と同じく、「病巣無菌化、組織再生」療法(LSTR Therapy)に則って治療できるはずである。歯科疾患の中の細菌感染症を対象とした治療は、特に内科的歯科治療の主要な部分ということで、病巣無菌化組織修復療法(LSTR Therapy)という。なお、硬組織病変を含む歯科領域での生体組織の回復は、Regeneration(再生)とは言い難い状況にあり、 現状では Repair(修復)としている。

 


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