1.薬剤使用時の心構え
LSTR療法に使用する無菌化のための薬剤は、市販の抗生物質・抗菌剤である。
これらの薬剤は、個々には内服薬として厚生省の認可が得られているが、混合して局所に応用することには認可が得られていない。それ故に、使用に当たっては次の事項を厳守しなければならない。
(1)一般的に抗菌剤を扱う上での注意
@「病巣殺菌が是非必要である。」という判断の下に使用すること
A薬物アレルギー等の問診を怠らないこと
B安全性(副作用、耐性菌など)への配慮を怠らないこと
C効能書きの内容を熟知して使用すること
(2)特に3Mix-MPを使用する場合の注意
@医師としての裁量の中で使用し、全責任は術者が負うこと
A薬剤は術者自身で調合すること
B患者への説明を怠らず、使用の同意を得ること
Cマニュアルどおりやっても臨床結果が悪ければ、原因がハッキリするまで薬剤の使用を中止すること
2.無菌化に使う薬剤
Metronidazoleは、嫌気性菌に対する選択的抗菌作用をもっている。Metronidazoleに抗菌スペクトルと作用の異なる抗菌剤(MinocyclineとCiprofloxacin)を混合すると口腔内細菌に対し100%の殺菌効果があることが実験で確認されている。
この3種類の抗菌剤の混合物を、3種併用薬剤、通称「3Mix」と呼んでいる。
3.3Mixの作り方
薬剤は錠剤(またはカプセル)なので、粉末にしてから使用する。
粉末にする作業中に薬剤が混じらないことだけは注意したい。
(1)薬剤を粉末にする道具
・乳鉢・乳棒(例:歯科用の手用アマルガム練和器)
・メス
・酒精綿
(2)薬剤の混合
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力価比21)
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重量比
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体積比
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アスゾール錠250mg |
3
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3
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3
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ミノマイシンカプセル100mg |
1
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1
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3
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シプロキサン錠200mg |
1
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1
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1
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4.基剤―その役割と作り方
3種併用薬剤(3Mix)は、粉末なので操作性が悪く、十分な量の確保も難しい。
そのため基剤を加えてペースト状にする。
基剤と3Mixを混合したペースト状の薬剤を「3Mix-MP®」と呼んでいる。
(1)材料
・ソルベース(マクロゴール軟膏)
・プロピレングリコール
(2)役割
@ソルベースは吸水性があり、抗菌剤の変質防止を果たす。
A Drug Delivery System
(3)作り方
@ 混合比率は、1:1(重量比)
A 蓋のある容器(歯科用薬ビン)に入れてチェアーサイドにおく。
(4)注意事項
@基剤は白濁している。無色透明に変化したら吸水した証拠で、使用不可
5.容器 ― 薬の変質を防ぐ最重要項目
(1)容器に求められる条件
@完璧な遮光 3Mix-MPは光により変質する。
A密閉 3Mix-MPは空気中の湿気で変質する。
B材質は、陶器が最良
C「1容器に1薬剤を保管」の厳守
(2)容器の保管・管理
@薬剤を入れた容器は、冷蔵庫内に保管される。
A冷蔵庫の設定 :冷蔵庫の使用にあたり、庫内は意外に湿気がある事、室温との温度差で結露が起こる事に留意しなければならない。
・ 庫内の温度は10〜15度とする。(庫内温度調節ダイヤルは1以下に設定)
6. 3Mix-MPの管理
(1)取り扱い上の基本的注意
@「抗菌剤は、非常に不安定な化学薬品である」と認識を新たにすること。
A水(湿気)、光、高温等で化学反応を起こし、変質する。
従って、蒸留水、生理食塩水、他の液状抗菌剤で練ってはならない。
B常に新鮮な薬を正しく取り扱う。
(2)薬の有効期限の目安
@
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錠剤、カプセル(市販のまま):パッケージに記載のとおり |
→約3年 |
A
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粉にして冷蔵庫に保管したまま外に出さない場合 |
→6ヶ月 |
B
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粉にして冷蔵庫に保管、治療の度に出し入れする場合 |
→1ヶ月 |
C
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3種類混合した場合(もちろん正しい基剤で練和) |
→1日 |
● 好結果を得るための必要充分条件 |
1.変質した薬剤を使用しないこと
2.必要濃度を確保すること
3.術中、薬剤の働きを阻害しないこと
4.病巣と口腔環境を遮断すること
5.適応症を誤らないこと
上記5条件のうち1つでも不十分なら、結果は"ゼロ"と私は考えている。 |